お風呂の入浴時間については、どれくらいの時間入浴することが身体に良いのかさまざまな意見を耳にします。
今回は、長時間お風呂に入るメリットとデメリットについて説明します。お風呂の入浴時間に関して、ぜひ理解を深めてください。
また実際におこなわれた調査の結果が示す、入浴時間と健康状態のちょっと驚きの関係性についてもまとめました。
お風呂の入浴時間に悩んでいる方は必読です!
この記事の監修者:田嶋 美裕 先生
循環器内科医。狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈などの循環器疾患のほか、高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病全般の治療に携わる。女医+(じょいぷらす)所属。
INDEX
■長時間お風呂に入るメリットとデメリット
まず、長時間お風呂に入るメリットとデメリットを確認しておきましょう。
◇長時間お風呂に入るメリット
疲れてお風呂に入ったとき、身体はもちろん、心までスッキリと軽くなったような感覚になった方は少なくないことでしょう。
お風呂はお肌や髪をキレイにするだけではなく、身体の中からリフレッシュさせる効果があるのです。
入浴の効果は一般的に、以下の3つがあげられます。
・温熱効果
血行が良くなり、栄養・酸素を含んだ新鮮な血液が全身にめぐり、同時に血液中の老廃物や二酸化炭素が排出されやすくなります。
ただこれは全身浴でじっくりと身体全体を温めることで生まれる効果なので、お湯につからないシャワーだけの入浴法では、ここまでの効果は期待できません。
・静水圧効果
浴槽に身体を沈めると、思わず「フーッ」と声が出ることがありますよね。
これは、胸が水圧に押されて横隔膜が挙がることで自然に声となって出る、「静水圧」によるもの。
この静水圧は全身におだやかなマッサージ効果を与えてくれます。
また水圧の効果で、手足などの末端で滞っていた体液・血液が心臓に押しもどされ、むくみが解消されます。
むくみで悩むことの多い女性にはとても嬉しい効果です。
・浮力効果
水の中では浮力がかかり、身体が軽く感じられます。
首までお湯につかると、お湯の中で感じる体重は実際の体重の約10分の1になります。体重50キロの方なら5キロということです。
重みから解放された身体はゆったりとしたリラックス状態になります。
◇長時間お風呂に入るデメリット
ゆっくりとお風呂に入るメリットを紹介しましたが、デメリットも存在します。
では、逆に長時間お風呂のデメリットとはどんな点でしょうか。
実はお風呂の温度は42度を境に、メリットであげた効果が逆転してしまうのです!
・お風呂の温度によっては自律神経の反応は反対に
人の身体には自律神経という神経があり、交感神経・副交感神経の2つは、シーソーのようにバランスを取りながら健康状態を維持しています。
お風呂における温度のわずかな差は、この自律神経の反応を正反対の方向に向かわせるのです。
・自律神経が逆効果に作用すると最悪の場合、血栓ができてしまう可能性も
42℃以上のお湯に入ると交感神経は高ぶり、興奮状態になります。
血圧は上昇し脈が速くなり、汗をかき筋肉は緊張状態になります。また血液の粘度が上昇し、血栓ができやすい状態になる可能性があります。
長風呂が好きな方も5分以上熱いお風呂に入ることは、デメリットも存在することを忘れないようにしましょう。
■10分以上お風呂に入るとお肌にも悪影響
熱いお湯で長風呂をするとお肌にも良くないのです。
なぜなら、良い肌を保つのに重要な皮膚の常在菌を増やすためには皮脂の取り除きすぎは良くないからです。
皮膚の常在菌にとって汗・皮脂は栄養となるので、皮膚にもある程度の皮脂が必要なのです。
熱いお湯になればなるほど、せっかくの皮脂が余分に取り除かれてしまうため、お肌の不良に繋がりやすくなります。
■最適な入浴時間とはどのくらい?
長時間のお風呂は血液の粘度を上昇させてしまうリスクがあり、お肌のためにも良くないことがおわかりいただけたと思います。
一概には言えませんが、身体にもお肌にも最適な入浴時間は湯温40度以下で入浴時間10分以下を目安にすると良いでしょう。
入浴習慣の実態や健康状態との相関関係を探るため、全国20~70代の男女、計960名を対象に、「入浴習慣」に関する意識調査を実施した結果によると、「入浴時間10分以下×湯温40℃以下」で入浴した人ほど、頭痛や便秘、薄毛の悩みが少ない傾向があったそうです。
さらに驚くことに、その他の入浴タイプの人に比べ、糖尿病(発症の可能性が高い人も含む)の方が半分以下という結果でした。
40度以下で10分以内の入浴なら、普段の入浴時に少し意識するだけなので、ぜひ実践してみてください。
■まとめ
長時間の入浴は、温熱効果で血行が良くなり疲労回復につながります。
その他に、末端の体液・血液が心臓に戻りむくみが解消される静水圧効果、
さらに浮力効果で身体が重みから解放され、リラックス状態にもなります。
しかし一方で、湯温が高く設定されたお風呂に長時間入ると、自律神経のバランスに影響を与えたり、脱水症状にもなったりするため、血液粘度が上昇、血栓ができやすい状態に。
また熱い温度での長風呂は皮脂が取れすぎてしまい、皮脂を栄養とする常在菌にも影響し、お肌の不調にもなりかねません。
温度40度以下×入浴時間10分以内での入浴方法は、頭痛や便秘、薄毛の悩みが少ない方が多い傾向にあるという驚きの調査結果もあります。
糖尿病の人の割合も低く、この湯温40度以下×入浴時間10分という入浴方は、身体にもお肌にも嬉しい効果ばかりです。
最適な入浴時間でお悩みの方はぜひ参考になさってください。