お風呂でのぼせて、頭がクラクラした経験のある方は多いでしょう。初めて経験したときはドキッとしてしまいますよね。
お風呂でのぼせる原因を理解しておけば、予防策も取れますし、いざという時もあわてず対処ができます。ぜひこの記事を参考にしてください。
また、「のぼせ」は、「湯あたり」「湯疲れ」とは違うものです。この違いに関しても、しっかり把握しておきましょう。
この記事の監修者:田嶋 美裕 先生
循環器内科医。狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈などの循環器疾患のほか、高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病全般の治療に携わる。女医+(じょいぷらす)所属。
■お風呂でのぼせてしまう原因とは?
まず、お風呂でのぼせる原因を理解しましょう。
思い当たる点がある方は、今後入浴時には注意してくださいね。
◇お風呂の温度が高い
お風呂の温度が高いと、急激に体温が上がり血行が促進され、血液は頭に集まり血管が拡張します。その結果、血圧が下がり、頭がクラクラしてしまうのです。
◇浴槽に浸かる時間が長い
浴槽の中では身体に水圧がかかるため、血行が促進されて脳に大量の血液が流れていきます。長風呂でボーッとしてしまうのはこのケースでしょう。
その状態で浴槽から上がると、今度は手足に血液が流れ、脳の血液が一気に減ってめまいを起こします。
◇浴槽から急に立ち上がる
身体が温まると血圧が低下します。急に立ち上がると、血圧は急に立ったことに対応できず、その結果、脳に十分な血液が行き渡らず、ふらついてしまうのです。
お風呂でのぼせる原因は以上の通りです。高めの温度の湯船に長時間浸かり、急に立ち上がるようなお風呂の入り方は立ち眩みも起こしますので、とても危険です。普段の入浴から気をつけてください。
■湯あたりや湯疲れとの違いについて
「のぼせ」とよく間違われる症状に、「湯あたり」と「湯疲れ」がありますが、原因が違うので、対策も異なってきます。
この違いをきちんと理解しておきましょう。
◇湯あたりは温泉で起きる
「湯あたり」は、温泉で起こる症状のことを指します。
温泉成分が原因で、めまいや頭痛、場合によっては発熱・嘔吐などの体調不良を起こします。
症状が出るまで比較的時間がかかり、温泉に入り始めて2〜3日後から7日程度で症状が出てくるのが一般的です。
原因は、温泉成分が身体に合わない、あるいは、温泉療養の過程で一時的に起こる好転反応と考えられています。
成分が合わない場合、残念ですがその温泉での入浴はやめるしかありません……。
好転反応の場合は、症状が落ち着いたタイミングで再び入浴を続けることもできますが、無理をするのは避けた方が良いでしょう。
◇湯疲れは入浴そのものによる疲れ
お風呂に入るという行為は、実はとてもエネルギーを使うものです。普段はシャワーのみであまりお湯に浸からない人が長湯すると出る症状が、「湯疲れ」です。
温泉に行ったときに、何回も入浴して疲れてしまうのも湯疲れになります。
一泊程度の温泉旅行で出る症状は、「湯あたり」ではなく「湯疲れ」と考えて良いでしょう。
■お風呂での「のぼせ」予防と対処法
お風呂での「のぼせ」の原因、「湯あたり」「湯疲れ」との違い、ご理解いただけましたか?
のぼせは、足元がふらついて最悪ケガをしてしまう危険性もありますので、のぼせた経験のある方はしっかり予防しましょう。
また、のぼせてしまった場合にどう対処するか覚えておけば、いざという時にあわてないですみます。
◇効果が期待できる予防策
まず、効果が期待できる予防策です。
・入浴前に水分補給
お風呂の中では自覚している以上に汗をかきます。水分補給しておけば、体温調節に役立ちます。
・浴槽に入る前のかけ湯
浴槽に入る前にしっかりと身体を温め、浴槽内で急激に血流循環が良くなるのを防ぎます。
・頭を冷たいタオルで冷やしながら入浴
頭に冷たいタオルをのせておけば、頭部の温まり過ぎを防ぎ、血流を調節する効果が期待できます。
・長時間入浴しない
特に熱いお湯に長時間浸かるのはNG。
・温度はぬるめに設定
身体を温め過ぎない38〜40度程度のお湯で入浴するのがおすすめです。
・分けて入浴
身体が温まってきたら、いったんお湯から上がりクールダウン。身体を冷ましてからまたお湯に浸かり、身体を温め過ぎないようにします。
・半身浴あるいは足浴にする
身体全体の温まり過ぎを防ぎます。
◇いざという時の対処法
次に、のぼせてしまったときの対処法です。
・立ち上がるときはゆっくり
急に立ち上がると、血圧が身体についていけません。
・足を高くして横になる
転んでしまうと、とても危険です。まずは症状が落ち着くまで横になりましょう。この際に足を高くし、身体全体の血圧を調整します。
・首筋・手足を濡れたタオルなどで冷やす
のぼせの原因は「熱」です。血管が集まる首筋・手足を集中的に冷やしましょう。ただし、のぼせたからと言って水風呂に飛び込んだりして急激に冷やすのは、身体に悪影響を及ぼすので避けましょう。
・糖分を補給する
しっかりとエネルギーを補給します。
■まとめ
身体を温め過ぎると、血管が拡張して血流が良くなり過ぎ、血圧が下がることで起きるのが「のぼせ」です。
温泉成分が原因の「湯あたり」、入浴で体力を使い過ぎる「湯疲れ」とは別物です。
のぼせは適切な対策で防ぐことができます。また、万が一のぼせてしまったときも、対処法を覚えておけば安心ですね。
何事も「やり過ぎ」は禁物です。自分に合った入浴法で気持ちの良いお風呂時間を送りましょう。