秋や冬になると、お風呂上がりに肌がかゆくなる方も多いでしょう。なぜお風呂に入ると肌がかゆくなるのか、その原因を知らずに悩んでいませんか?「もともと乾燥肌の人がかゆくなるのでは」と思いがちですが、実はお風呂の入り方がかゆみを引き起こす要因になるのです。
この記事では、お風呂に入ると起こるかゆみの原因と、かゆみを抑えるお風呂の入り方について紹介します。お風呂上がりのつらいかゆみに悩む方は、ぜひチェックしてみてください。
この記事の監修者:宇井 千穂 院長(やさしい美容皮膚科・皮フ科 秋葉原)
元準ミス日本。全日空客室乗務員を経て、皮膚科医としてアトピー性皮膚炎を中心とした皮膚疾患を診療。本や雑誌の執筆をはじめ、web雑誌での連載やサプリメント・化粧品の監修などでも、多方面に活躍の場を広げている。女医+(じょいぷらす)所属。
■そもそもかゆみはなぜ起こるのか
お風呂に入ると肌がかゆくなるのは、バリア機能が低下するドライスキンによるものです。
正常な肌は、水分を保持する機能と分泌される皮脂が膜となって、外部の刺激から肌を守るバリア機能が働きます。
しかし、かゆみが起こる肌は水分と油分が失われ、バリア機能が低下したカサカサの状態に。バリア機能が低下すると外部の刺激を受けやすくなるため、わずかな刺激に敏感に反応し、肌のかゆみとなってあらわれるのです。
また、肌がかゆくなるメカニズムは、皮膚の下にある知覚神経にかゆみ成分のヒスタミンが作用することです。正常な肌の知覚神経は表皮と真皮の境までにとどまっている一方、ドライスキンは表皮に近い角層まで伸びるため、刺激に反応しやすい状態になるのです。
ドライスキンは、冬になると肌が乾燥する方や、エアコンなどで乾燥する環境で長時間過ごす方に起きやすくなります。ドライスキンによるかゆみは、すねは太もも、ふくらはぎ、腰など、全身のいたるところで起きるのが特徴。
また、肌をかいてしまうと皮膚がさらに傷付き、かゆみ成分のヒスタミンが増すという悪循環につながります。
■お風呂によってかゆみが起こる原因
お風呂に入るとかゆみが起こる原因とは、「熱いお湯や長時間の入浴・ナイロンタオルによる摩擦・入浴剤の成分」など、入浴のやり方が関係しています。
熱いお湯に長く浸かると、血行が良くなることが刺激となり、かゆみが強くなることがあります。
また、肌が持っている天然保湿成分や、外部の刺激から守る皮脂まで落ちてしまい、肌のバリア機能が低下。無防備になった肌をナイロンタオルで擦ると、それが刺激となってかゆみが起きてしまうのです。
また、硫黄の成分が入った入浴剤も、かゆみを起こす原因の1つです。
硫黄は肌を乾燥させる作用があるので、使用は控えた方がいいでしょう。旅行で硫黄の温泉に入る場合は、お風呂上りの保湿ケアを欠かさないことが大切です。
■かゆみを防ぐ入浴方法
お風呂上りの肌のかゆみを抑えるためには、入浴方法を見直すことが重要。身体の洗い方からお湯の温度、保湿ケア方法まで、入浴方法のポイントを紹介します。
◇身体の洗い方
まず、摩擦力が強いナイロンタオルをやめ、手のひら、もしくは綿などのやわらかいタオルを使いましょう。弱酸性のボディソープをしっかりと泡立て、擦って落とすのではなく、泡でやさしくなでるように洗うことがポイント。
皮脂の分泌が少なく乾燥しやすい、背中や腰まわり、ひざ下などは特に意識してやさしく洗いましょう。
◇お湯の温度
お湯の温度は、冬場は40度前後、夏で38度前後に設定し、熱いお湯の使用は控えることが大切です。ややぬるめのお湯にすることで、肌の水分や天然保湿成分、皮脂を流さずに入浴できます。
また、保湿効果のある入浴剤を入れると、肌に必要なうるおいを守り、しっとりとした肌に保つ効果が期待できます。保湿ケアをしても乾燥やかゆみが気になる方は、入浴剤も工夫するのがおすすめです。
◇乾燥を防ぐ保湿ケア
お風呂上がりは肌の水分が蒸発し、乾燥が急速に進みます。タオルで拭いた肌が乾ききる前、できれば3分以内にすばやく保湿ケアをすることが大切です。顔と同じように、化粧水で水分を与え、油分のある保湿剤やクリームで膜を作るのがポイント。ボディ用の乳液や保湿剤は、バリア機能を保つセラミド、ヒアルロン酸、アミノ酸などの成分を配合したタイプがおすすめです。
ただし、入浴後や寝る前に体温が高くなると、かゆみがぶり返すことがあります。かいてしまうとさらにかゆみが増すので、応急処置として肌を冷やすことが効果的です。
濡らしたタオルを肌に当て、クールダウンすると快適に寝られるでしょう。
■まとめ
お風呂上りに起こるかゆみの原因は、ドライスキンとバリア機能の低下です。ドライスキンはかゆみを伝達する神経が表皮近くまで伸び、かゆみを感じやすい状態に。バリア機能が低下すると外部の刺激に無防備になることから、お風呂上りのかゆみは乾燥が大きく関係しているのです。
熱いお湯に浸かる、ゴシゴシと身体を擦るといったことは、乾燥とかゆみを招くので見直しが必要です。
お湯の温度はぬるめにする、身体は泡でやさしく洗う、お風呂上りの保湿ケアの3つが、かゆみを抑えるポイント。とくにスキンケアでは3分以内に保湿をすませると、かゆみが起きにくく肌がしっとりうるおいます。
また、体温が下がってからかゆみがぶり返したら、決してかかずに冷やすことが重要。濡れタオルなどでかゆい部分を冷やすと、かゆみの悪循環もなく、安眠できるでしょう。