寒さで身体の芯まで冷えてしまう冬は、お風呂でじっくり身体を温めるひとときが至福ですよね。
しかし、お風呂を出たあともポカポカの状態を維持できるかは、お風呂の入り方で異なることを知っていましたか?
この記事では、浴槽派・シャワー派別で身体の温かさを保つ入浴法、冬の入浴で気をつけてほしいヒートショックについて解説します。
この記事の監修者:田嶋 美裕 先生
循環器内科医。狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈などの循環器疾患のほか、高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病全般の治療に携わる。女医+(じょいぷらす)所属。
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■【浴槽にお湯をためる派へ】お風呂に浸かって温かさを保つには?
冬にお湯に浸かる方は、身体を温めようと40度以上に温度を高くすることがあるかと思います。しかし、身体を芯から温めるには、40度くらいのぬるめのお湯に長く浸かることが大切です。
身体が温かいと感じるのは、血管が拡張されて血液のめぐりが良くなる状態のことです。熱いお湯に浸かった場合、身体の表面が温まるだけで身体の深部はあまり温まりません。そのため、お風呂上がりに体温が下がる原因となります。
一方、ぬるめのお湯に10分以上浸かると、血管がしっかり拡張されて血液の流れが良くなり、お風呂から出たあとも温かさをキープできます。
また、お風呂から出るときに冷たい水を足先にかけることで、体温を下げにくくする効果が期待できます。血管が拡張した状態でお風呂から出ると、身体の表面から熱が逃げやすいために、体温が下がる原因となるのです。
ぬるめのお湯は40度以下とご紹介しましたが、実際のところ平熱によって温度が異なります。平熱に+2~3度くらいがちょうどいいぬるめの温度で、+5~6度は熱い温度にあたります。季節によって平熱が若干変わるので、体温を実際に計ってみるといいでしょう。
ただし、寒い浴室から熱いお湯にいきなり入ると、血圧の変動が大きくなってしまい、心臓に負担がかかります。ですので、冬場は浴室全体を温めて、お湯と浴室との温度差を少なくして血圧の変動を防ぐことが大切です。お湯をためる際に、蛇口ではなく高い位置からシャワーを出すと、浴室内の温度が上がります。
■【冬でもシャワー派へ】冬でもシャワーだけで温かさを保つには?
お湯に浸かる時間がない方や、1年中シャワー派という方もいるでしょう。シャワーで身体をしっかり温めるには、温度設定と温める部位にポイントがあります。
◇基本は15分の熱め(40~42度)シャワーを使う
お湯に浸かる場合はぬるめが適温ですが、シャワーの場合は40度以上の熱めにしましょう。時間は15分と長めに浴びることで、身体がしっかり温まります。
◇42〜43℃のお湯で足湯する
シャワーをただ全身に浴びるよりも、足を重点的に温めるのがポイント。洗面器やバケツに42~43度くらいのお湯をためて足湯をすると、血液が全身をめぐることで身体がしっかり温まります。足湯をしながらシャンプーをすると効率的なのでおすすめです。
◇「首元」「足首」「お尻の上」、また、集中的にそけい部を温める
効率よく身体を温めるには、首元、くるぶしを含めた足首、お尻の上にシャワーを当てるのがポイント。
首元、そけい部(足の付け根)やわきの下は太い血管が走っているので、シャワーを当てるとすぐに身体が温まります。お尻の上は血管がたくさん通っているうえに、筋肉や脂肪が少ないので、即効で身体がポカポカに。お尻の上が温まると、腰痛やお腹の冷えの緩和、自律神経を整える効果も期待できます。
また、血液の流れが良くなることでリンパのが流れも改善し、むくみの緩和も期待できますよ。
◇浴室の中で身体を拭く
シャワーだけでも身体を温めることは可能ですが、問題は湯冷めしやすいこと。寒い脱衣所にいるだけで一気に身体が冷えてしまうので、シャワーで温まっている浴室で身体を拭くのがおすすめです。
シャワーのあとも肌が乾燥しやすいので、浴室内で保湿ケアをするのも効果的。保湿ケアがすんだら素早くパジャマを着て、髪もすぐに乾かすと湯冷めしないで済みます。
■寒い季節の入浴には「ヒートショック(血圧の急変動)」や「浴室内熱中症」に注意!
寒い冬にお風呂に入る際、ヒートショックや浴室内熱中症という危険が潜んでいます。安全にお風呂に入るために、2つの危険性をチェックしましょう。
◇「ヒートショック」とは
ヒートショックは、暖かい室内から寒い部屋への移動などの急激な温度変化により、血圧が大きく変動する現象です。血圧の急激な変動で身体に負担がかかると、体調を崩すだけでなく、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる重大な病気が起こる危険性もあります。
温度差が原因のヒートショックは、冬のお風呂で最も起きやすいといわれています。寒い脱衣所で裸になると血管が収縮されて血圧が急上昇し、お湯に浸かったりシャワーを浴びたりすると、今度は血管が拡張されて血圧が急降下。このような血圧の大きな変動が起きやすい環境なので、脱衣所や浴室をあらかじめ温めておくなど対策が必要です。
◇「浴室内熱中症」とは
浴室内熱中症とは、長湯や熱いお湯で身体が温まると血管が拡張され、血圧が低下することで起こる症状です。のぼせやめまいによる転倒に加え、意識障害による溺死が高齢者に多く起こっています。
浴室内熱中症を防ぐには、とにかく長湯をしないこと、ぬるめの温度を心がけることが大切です。
■まとめ
寒さで冷え切った身体をお風呂でしっかり温め、ポカポカな身体を持続させるには入浴方法にコツがあります。浴槽に浸かる派の方は、平熱+2~3度のぬるめのお湯に、10分以上浸かるのが効果的です。シャワー派の方は、40度以上の熱めにすること、足や首元、太もも、そけい部など、ポイントを絞って集中的にシャワーをかけると効率よく身体が温まります。
ただし、気温が低い冬は、お風呂の温度差が大きくなるため、ヒートショックや浴室内熱中症が起こることも。浴室をあらかじめ温めておき、温度差を減らすとそれらのリスクを抑えることにつながります。身体が冷えていると熱いお風呂やシャワーを浴びたくなりますが、身体の芯まで温まらないだけでなく、健康に影響を及ぼすので注意しましょう。