毎晩お風呂に入るという人は多いと思いますが、ただなんとなくお風呂に入ってしまっていないでしょうか。
実は最近、入浴時間や入浴方法で「得られる効果」が変わると話題になっています。
そこで今回は、入浴方法の違いによって期待できる効果や、寝つきをよくする入浴方法、肩こりに効果的な入浴方法などを3つご紹介したいと思います。
この記事の監修者:川崎 加織 先生
皮フ科かわさきかおりクリニック院長。医学博士 日本皮膚科学会専門医 日本抗加齢医学会専門医。
「体の内外から美しくなれるクリニック」をコンセプトに一般皮膚科診療だけでなく、美容医療、頭髪治療なども行っている。またweb雑誌での連載やサプリメント・化粧品の監修などでも、多方面に活躍の場を広げている。
INDEX
■お風呂は入浴時間・入浴方法で効果が変わるってほんとう?
「入浴時間や入浴方法で得られる効果が変わる」といわれていますが、具体的にはどのような効果や違いがあるのでしょうか?
◇全身浴と半身浴
入浴方法には、全身浴と半身浴の2種類があります。
肩まで湯船に浸かる全身浴では、お湯や水圧の影響をダイレクトに受けます。深くお湯に浸かることで入浴時の気持ちよさも十分に実感でき、リラックス効果も高まるでしょう。
ただ、全身がお湯に浸かることで血液の循環が急激に上がり、心拍数の急上昇などから心臓に強い負担がかかってしまう場合も。
ですので、お風呂場と脱衣所の寒暖差が激しい真冬や、高齢者・高血圧の人は特に注意が必要です。
みぞおちまで浸かる半身浴では、全身浴と比べると心臓への負担が少なく長時間の入浴に向いています。下半身に水圧がかかるので、足や腹部にかけての血液循環を効率的に促してくれます。そのため、足のむくみや疲労回復にも効果的!
高齢者や心臓が弱い人は、半身浴で無理なく入浴する方法がおすすめです。
◇湯船の温度
お湯の温度は、42度以上か40度以下で効果が変わってきます。
まず、湯船の温度が42度以上の熱いお湯に浸かると交感神経が刺激されます。
交感神経とは、ひとことでいうと「体を刺激する神経」。心臓の動きが促進されて血圧が上昇し、筋肉は収縮して体をシャキッと目覚めさせる働きをします。
反対に40度以下のぬるま湯に浸かった場合、体をリラックスさせる働きの副交感神経が優位になります。副交感神経が優位になると、心臓の動きを鎮静化させて脈拍や血圧の低下、筋肉を弛緩させたりします。
体への負担が少なくリラックスさせてくれるので、就寝前や高齢者の入浴時にもぴったりの温度といえるでしょう。
42度以上の熱いお湯に浸かれば体をエネルギッシュにして効率よくリフレッシュさせることができ、ぬるま湯だとリラックス効果が期待できるといえます。
◇入浴時間
適切な入浴時間は、お湯の温度によって変わってきます。
42度以上の熱いお湯に入るときは、3分程度の短時間で入浴するのがおすすめ。5分以上熱いお湯に浸かってしまうと血液の粘度が上がり、血栓ができやすくなるのでとても危険です。40度以下のぬるま湯に入るときは、リラックスするためにゆっくりと15分程度入浴するといいですよ。
・元気を出したいときやリフレッシュしたいとき→熱いお湯に3分程度
・寝つきをよくしたいときやリラックスしたいとき→ぬるま湯に15分程度
その日の気分や体の状態に合わせ、得たい効果によって熱い湯船かぬるま湯かを選んで入浴してみてはいかがでしょうか?
■夜にぐっすり眠るための入浴法
最近では、「なかなか寝つけない」「薬がないと寝ることができない」という、いわゆる睡眠障害を抱えている人も少なくありません。
ここではそんな人のために、睡眠の質を高めて安眠へ導く入浴方法をご紹介します。
◇40度のお湯に15分浸かる
夜、自然と眠くなるためには、リラックスできていることがとても大切。
ぬるま湯に浸かると副交感神経が優位になって体を鎮めてくれるため、お湯の温度は38~40度のぬるま湯にしましょう。
最初の5分は首まで深く浸かり、残りの10分は半身浴。こうすることで血流を効率よく促し、体の深部まで温かく保ってくれますよ!
◇就寝の1~2時間前に入浴をする
人には「体温が下がるときに寝つきやすくなる」という生理的現象がありますが、これを利用して不眠症の改善を目指す方法もおすすめです。
入浴によって上がった体温は約1~2時間後に下がりはじめ、体温が下がりはじめたころに自然な眠気がきやすくなります。入浴後の時間は「リラックスタイム」と決めて、寝つきがよくなるアロマやマッサージを取り入れてみてもいいですね。
■肩こり、腰痛がラクになる入浴法
ここでは、肩こりや腰痛におすすめの入浴方法をご紹介していきましょう。
◇肩こりに効くアロマオイルを取り入れる
入浴剤として、肩こりに効果が期待できるアロマオイルを使用してみましょう。
肩こりに効果的なアロマオイルは、以下を参考にしてみてください。
・筋肉弛緩作用のある「マジョラム」
・鎮痛効果のある「レモングラス」
・血行促進効果のある「ジンジャー」
入浴剤としてアロマオイルを使用する場合は、浴槽にオイル3滴を直接垂らします。
同じ香りを3滴でもよいですが、好きなオイルをブレンドして香りを楽しむのもおすすめです。
■体の疲れを取るための入浴法
お風呂にゆっくりと浸かることで期待できる効果は、なんといっても「疲労回復効果」ではないでしょうか。ここで、体の疲れをとりたいときに効果的な入浴方法をご紹介します。
◇温冷交互浴
温冷交互浴とはその名のとおり、お湯と冷水のお風呂に交互で浸かる入浴方法です。
40度のお湯で3分間全身浴をし、その後30度程度のぬるま湯をシャワーで手足にかけます。これを3回ほど繰り返し、最後はお湯に浸かってお風呂を出ます。
とてもシンプルで簡単にチャレンジできる温冷交互浴ですが、お湯と冷水に近いぬるま湯を交互で使用することで交感神経が刺激され、末端血管の循環がよくなって疲労回復に効果的だと考えられていますよ。
冷水ではなく30度程度のぬるま湯を使用するとはいえ、お湯のあとに使用すると体感温度はかなり冷たく感じるもの。高齢者や体の弱い人・高血圧などの人には向かない入浴方法ですし、脳卒中などの既往がある場合にも注意しましょう。
■まとめ
全身浴・半身浴を、そのときの体調や気分に合わせて選択することで、入浴効果を得られやすくなるでしょう。また、お湯の温度もご自分の体調を見ながら設定することが大切です。
ぜひ目的や体質にあった入浴で、健康的で安全にお風呂を楽しんでくださいね。